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『いのちの循環 座談会』
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#大阪 #コメント集
大阪府の面積の3分の1は、森林。大阪は日本で2番目に小さい都道府県だし、「商いのまち」として発展してきた歴史的イメージも強いからか、そんなに森が広がっているの? と少々意外に感じるかもしれません。海に接しない大阪平野の三辺を取り囲んでいる森は、この地のひとたちにとってどのような存在なのか。大阪の森をフィールドに活動する方々を訪ねました。
建築学の分野で、建築材料としての「木」を研究している。現状、木質建材の品質は、伐採した木(丸太)を製材工程の中で乾燥させたあとに検査・評価されるのが主流。乾燥には数ヶ月〜数年単位の時間がかかり、丸太の状態でのその木の良し悪しの見立ては、製材所の目利きにかかっている。行さんは、丸太の状態でもっと定量的な評価ができないか、その可能性を探っているのだそう。この日はデータ収集として、調査にご協力くださった千早赤阪村の森で、荷重をかけて木の強度を測る「曲げ試験」を実施。
この日調査で赴いたのは、大阪府千早赤阪村の山。黄色いスズランテープを巻いている木を対象に「曲げ試験」をしていく。前日の雨のせいか、森の空気はしっとりとしていた。
「曲げ試験」の測定器は先行研究を参考に自作した“簡易版”で、材料はすべてホームセンターで揃えたそう。……と教えてもらっても、この時点では、これを使ってどのように測定するのかまったく見当がつかない。
組み立てた測定器を調査対象の木のもとへ。「冬山は過ごしやすいです。動いていると体もあたたまりますし。夏は陽が長くて調査時間をたくさんとれるメリットはありますが、いかんせん虫と蜘蛛の巣がやっかいで……」と四季の調査事情もポツリと。
すぐそばを流れる小川のせせらぎをBGMに、木に測定器や機械を設置していく。
「もうちょっと上」「はい」「はい、そこで止めてOK」と、デジタル水平器も使いながら、測定器が地面と並行になるように調整。大がかりで繊細な準備作業だ。
いざ、測定。測定器に全体重をのせ、てこの原理で木をしならせる。木に取り付けた機械が、しなり具合を波形でモニター表示する。「緑の線が出てる?」「出てます」「やったー! 昨日は荷重が低くて緑の線が出なかってん」(取材日は、1週間におよぶ調査の中日だった)
2人でモニターを覗き込んで談義。いま測った1本目の木は、直径270mmほどの杉。「見た目にはまったくしなりませんでしたね」と声をかけると、「この太さだとそうですね。僕の全体重をかけても、木のしなりは0コンマ何ミリの世界です」とのこと。
1本あたり3回測定しながら、3本目の木へ。なかなかの斜面。調査対象の木は、高さや幹の太さで選定したそう。「いわゆるビッグデータも、もとは1つ1つのデータからできています。僕のこの研究は、その基礎データをあつめている段階のもので、データがあるのはパソコンじゃなくて現場。地道な作業ですが楽しいです」
この日は午前中の2時間強で、調査対象の30本のうち4本の木に「曲げ試験」を実施。「この森もそうですが、山主さんや管理者さんにご協力いただいて僕の研究は成り立っています。お昼からまた山を紹介していただけそうと連絡が入ったので、打ち合わせに行ってきます!」と、行さんは帰りの車を飛ばしていった。
「貝塚市の山に近い場所で生まれ育ったので、子どもの頃から森や川で遊んでいました。山という存在には慣れ親しんできましたが、まさか今のように研究対象になるとは想像していませんでしたよ。
高校3年生の夏にオープンキャンパスに行ったとき、建築物が作られていくプロセスに面白さを感じて建築学の道へ進みました。実家が築80年以上の日本家屋だったこともあって、もともと「木造が好き」っていうのはどこかにあったと思います。そういう思いがベースにある中でSDGsについても学んだりして、木造建築についてより深く知りたいという思いが段々と強くなり、今の研究につながっています。
研究活動では日々森に入って、木に荷重をかけて数値を取る、という地道な作業を重ねています。そういう活動で森と接していると、子どもの頃に見ていた漠然とした森の捉え方じゃなくて、”木”1本1本の個性を感じながら研究に結びつけて見る、という捉え方が身についてしまいました。例えば、斜面の形状によって日光の当たる方だけに枝が生えていたりします。それは、絵に描いたような、全方向に均等に枝が伸びているいわゆる”木”のイメージとは全く違う、その木の個性ですよね。同じ山でも位置が変われば木の枝つきも変わる。研究活動を通して、森の見方が変わりました。」
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