「想うベンチ」プロジェクトは“いのちの循環“がテーマです。そのWEBメディアがスタートします。テーマについて一緒に考えながら 自分の興味や違和感を掘り起こし記事にする。そんな「想うライター」を募集します。
万博開始約1年前の2024年6月、こんな呼びかけの公募を実施。結果集まった約20名の方々は、ほとんどが記事を書いたことのない大阪府民の方々です。
「想うライター」として、編集のプロと共に月2回の編集会議を行いながら、「私が感じる“いのち”とは」を考えることから始まり、企画、取材し、約半年間かけて記事を制作してきました。それぞれが想う “いのち”は、星や炎、手料理や町、風鈴、伝統野菜、音楽の調和まで、スタート時には想像できなかったほど多様な記事となり、プロジェクトサイトに掲載されました。
活動は終了しましたが、せっかくなら「想うベンチ」をみんなで見ようと、2025年6月中旬、大阪・関西万博会場に集合しました。
想いを共有することで、深くなる。

「午後3時に想うベンチの前でお会いしましょう」という約束通り、想うライターのみなさん、運営のエイチ・ツー・オー リテイリング株式会社のメンバー、なりわいカンパニー編集スタッフたちが想うベンチ前に集まりました。半年間行ってきた編集会議は、ずっとオンラインだったこともあり、始めてリアルでお会いする喜びを口にしながら、ご挨拶。そしてそれぞれこの活動に関わった想いなどについて語り合いました。
「私が記事なんて書けるか心配だったけど、まさかこんな記事になるとは。本当にみなさんのおかげ」
「自分の記事もそうだけど、みなさんの記事を何度も読んでます」
「記事で取材していた場所、知らなかったけど、この間行ってきました!あんな場所があったなんて」
記事が出来上がった瞬間より、少し時が経ったこの時のほうが記事についての想いが膨らんでいる様子でした。でも多くの方々が何より口にしていたのは、“いのち”について想いを共有し合った時間のこと。
「“いのち”という友人ともなかなか話さないテーマについて、編集会議でみなさんと話し合えて、人生の深い経験に」
「仕事でもないし、年齢も住んでいる場所も違う人たちと、自分が考えている“いのち”について話して、一緒に見守って。今日改めてお会いして、自分がみなさんのこと深い気持ちで想ってるんだなって感じました」
“いのち”と一言で言っても、それぞれ想いを馳せる方向も違うし、書いた記事も全然違う。ただ、半年間、「私にとってのいのちとは」や「なぜ自分がそう感じるのか」を自分に問いかけ、 編集会議で“いのち”を一緒に語り合ったということ。その時間がこれだけ温かいつながりになるのだとみなさん感じているようで、これまでの想いがぐっと深くなる時間となりました。

またいつか、どこかのベンチの前で。
集まってみて改めて思ったこと。当日お会いできた想うライターの方々から後日送っていただいたコメントをご紹介します。(いただいた全文の一部を掲載しています)
「万博会場で何を見ても、食べても「これもこうゆう意味でいのちに通じるなぁ」と、想うライターの思考が染み付いてるのを感じた一日でした(笑)。記事を書くことについては自分と向き合うことだったと思います。「いのち」について考えると、さいごは自分の幸せや喜びの価値観を知ることになりました。そのことは今後、自分らしい人生の選択に繋がっていくと思います。職場で想うライターのお話をすると、事務以外で文章を書く業務が増えました。いつか仕事で職人さんのお話を聞きに行けたらなぁと思っています」
(古市麻依)
「まず面白かったのが「いのち」という一つのテーマでそれぞれのライターさんが全く内容が被ること無く、独自の人生経験や価値観から生み出されたユニークなテーマを定められた事。そして毎週皆様がそれぞれのテーマをより深く掘り下げられていく様子を間近で見させて(というかその過程を共有させて頂く事が出来)本当に自分の中で感じ学ばせて頂く事が出来ました。私自身は以前から感じていた「炎」というものと「命」の繋がりを「護摩だき」を取材する事でより深く追求する事ができ、とても貴重な経験となりました。」(田川優)
「自分の祖父母や両親から聞いていた1970年の万博。万博に自分が関われることは一生の思い出になるんだろうと、応募した1年前。採用頂き、自分に務まるのか不安もありましたが、楽しく文章を書く姿を子供に見せたいという強い気持ちがありました。看護師として文章を書くことは少なくはなかったのですが、誰にでもわかる言葉を、決まった様式、データを並べて論理的に書く日々。そこに自分の感情を反映することはできないことに窮屈さを感じていたのだと、活動を通して気付きました。この先も2025年を振り返る時、間違いなく想うベンチが出てくると思います。本当に良い時間でした。」(うえたきよこ)
「想うベンチに参加した年は、個人的に環境の変化が多い時期でした。どこか心落ち着かない毎日の中で、定期的に皆様とお話しできる時間が、いつも楽しみでした。悩みやアイデアを共感共有できる場所があること、自分にとって大変貴重でした。また、これまでそっとしていたネガティブなきもちを記事のテーマに取り上げ、新たな気づきをたくさん得て前向きな気持ちに昇華できたこと。これからの自分にとって大きな経験となりました。」(清水夏奈)
「大学院で研究をしていた昨年。ゼロからどういうところを訪れて記事にするのか考える、私自身は助けられてばかりでしたが皆様と色んなお話をして色んなことを聞けたのは本当にかけがえの無い経験でした。あれから私は東京で働いています。結局研究内容とは全然違うことを仕事にしていますが、自分の好きな書くということを軸に働けているのでとても幸せです。私が本当にしたいことが何なのかを思い出させてくれ、背中を押してくれたそんな経験でした。」(大野夏凛)
「仕事を辞めてから、体調もイマイチ、新しい仕事を探す気力も体力もなく、在宅ワークだからと想うベンチのライター募集に応募した1年前。いのちとは何かと聞かれても、みんなのようにスラスラ思いつくネタもなく、短絡的なネタ出しをして編集長からバッサリ却下。
あー、やっぱり辞めときゃよかったなーと後悔の念もありましたが、最後までやり切ってよかった」(岡村美由紀)
「Zoom会議も不慣れで毎回緊張しながらパソコンに向かっていましたが、毎月の編集会議で想いを共有することは充実した時間となりました。コロナにかかって体調を崩し、大阪に少し戻ってみるかとこちらに来て1年半程。東京と大阪のどちらに住むか決められない自分がいましたが、前よりも深く大阪を知って経験や想いが増えた分、もし東京に住む事にしたとしても、物理的な距離が前よりも感じられなくなるのではと思います」(加藤茉莉)
「めちゃくちゃ身近だけど、知らない大阪を体験できたのも本当にいい経験だったと思いました。いのちっていう、普段の日常を過ごすなかではなかなか直面しない、漠然としたテーマを考えたときに、自分の五感と感情のセンサーを総動員して向き合わないと書けないのだな〜と思いました。そして、完成した皆さんの記事を拝見してなんだか本当に泣きそうになる私がいて。なんでこんなに泣きそうなんだろうって考えたときに、いのちがテーマだからなのかってハッとしました。皆さんの文章はとても尊いです。
あの万博の日に初めて皆さんにお会いしました。でもなんだか初めて会う感じがなく、なんならもっと深い感じ。皆さんがいのちをテーマにそれぞれに想うことを掘り起こす作業をずっと見届けていたので、初対面だけれど不思議とそれより深いところのつながりを感じました」(木村綾賀)
「一年は、あっというまでした。テーマが決まってからは、どんどん私がやりたい事をとことん追いかけていたような気がします。いろんな野菜に出会い、どこに出かけてもなにわ伝統野菜が気になる生活でした。濵田農園さんという素敵なご夫婦の出会いもまたこの記事を書いてなければ、出逢わなかったと思います。万博最終日に、このベンチの最後のイチニチの思い出にアクセスして読ませたいとおもっています。万博が終わっても、日本のどこかでベンチが配置された時、偶然にみなさまに出会えそうな気がします」(マツイサヨコ)

大阪府民ボランティアライター「想うライター」について

「想うライター」は、公募で集まった大阪府に居住または通勤・通学している学生・社会人です。「想うベンチプロジェクト」のテーマ「いのちの循環」を軸に自分の興味・関心を起点にした企画を立て、プロの編集者のアドバイスやサポートを受けながら、取材し原稿を制作しました。
活動期間:2024.8-2025.3
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