新檜尾台小学校では昨年から校庭の空いたスペースにオリーブ畑をつくる活動が始まっているそうで、そこに「『想うベンチ』もぜひ」とのこと。小学校になぜオリーブ畑なんだろう、そこにはどういう想いがあるんだろう。活動に関わる地元の造園屋さん、「北野緑生園」の北野裕之さんに活動への想いを伺いました。

北野緑生園 代表取締役
北野 裕之さん
昭和20年創業「北野緑生園」(大阪府堺市)の3代目。植木卸業を営む傍ら、地域の耕作放棄地を「オリーブの林」として整備する活動や、オリーブを活用した商品開発など(YURINA OLIVE)も行っている。
オリーブと一緒にできること

―泉北ニュータウン光明池地区にある堺市立新檜尾台小学校。かつて在校生1,000人を超えるマンモス校だったが、現在は295人(2024年度)に。教室だけでなく、校庭にもできた空きスペースを有効活用するため、オリーブの植樹活動をしている北野さんに「オリーブの畑」をつくってほしいと依頼があったそう。
昔、樹齢500年〜1000年の大きなオリーブの木を輸入するためにスペインへ行ったのですが、そこで出会ったのは、永遠に続くようなオリーブの原風景と、味わったことのないオリーブオイルの美味しさだったんです。「これを大阪でも再現したい」と思って、それ以来本業である造園とは別に地域でオリーブの植樹活動をしているんです。

新檜尾台小学校の校庭にはオリーブの木を50~60本植樹する予定にしています。もちろん、自分が好きなオリーブ畑を広げたいっていうのもありますが、それだけじゃなくて、オリーブって捨てるところがない木なんですよね。造園では、植栽としてオリーブの木を扱っても実は落ちて終わりという扱いだけど、実際には収穫した実を塩漬けやオリーブオイルにして食べることもできるし、剪定した枝葉でリースをつくることも。永年作物なので枝を挿し木にしてどんどん増やすことができる。オリーブだからこそ、子どもたちが1年中触れていろんなことを考えたり、ものを生み出したりする体験ができるんじゃないかなって思っています。
どんな木も、同じものは二つとない

—北野緑生園では樹齢800年の大きなオリーブの樹も育成している 。樹の姿はもちろん、オリーブが生み出すものにも魅了され、日々オリーブのことを考え続けているという北野さん。
オリーブの実は豊作だった次の年は不作になるという表年と裏年を繰り返します。剪定の仕方を工夫してバランスはとりますが、収穫量はこちらの思うようにはならないんです。でもオリーブの実って、収穫していると指先がだんだん油分で光ってくる。すごいなぁと思ってね。オリーブの木は問いかけても何も語ってくれないし、もちろん話しかけてもくれない。でも作業しながらテカテカに光る手を見ると、オリーブの木と会話しているように感じて夢中になっちゃう。

あと、オリーブの樹形は剪定によって盆栽にも仕立てることができるし、上にも横にも伸ばせて、曲がりくねった形にも育てられます。どんどん伸びていく枝を剪定しながら、一緒に形をつくっている感覚なんですよね。そもそも木には同じものが二つとない。生き物のもつ素性(そせい)に触れられるのってやっぱりおもしろいなって思います。

ベンチに座って「見続けたい風景」って何だろう
―昔はこのあたりにコンビニもスーパーもなく、子供時代、北野さんは外で遊びながらお腹がすいたらザクロやキンカン、ミカンを獲って食べていたそう。
口に入れた瞬間の「おいしいなぁ」という記憶が残っていて、今も実を獲るのが好きなんです(笑)。自然の中で木や植物、虫などいろんなものを見たり、「これ、さわったら痛いんや!」と感じたり、そうやって想像力や未知のものへの興味が湧いてきたんですよね。子どもの頃、「あの山の向こうは、どうなってるんやろう」といつも思っていました。未だに同じような気持ちで、真っ黒に日焼けしながら知らない土地をロードバイクで走ることがあります。二度と出会えない風景とか、予測不能なできごとも、めちゃくちゃ面白いなぁと思って。走りながら感じることがたくさんあったんです。だから新檜尾台小学校の子どもたちにも、五感をめいっぱい使ってワクワクしながらこの場所で過ごしてほしいなと思っています。

そしてそこにいつかベンチが置かれる。子どもたちが座った時にどんな風景が見えるんだろう、どんな風景がいいんだろうってずっと考えているんです。自分の子ども時代の記憶を思い返すと、オリーブはもちろん、いろんな植物が植えられていて、虫もいて、季節とともに日々変化する。そんな風景があったら楽しいだろうなって。子どもたちとこれから一緒に作っていけたらいいなと思っています。
