作って終わりじゃない。スプーンからはじまる“木との日常”。 〜『大阪の森の木でスプーンを作ろう!』ワークショップ プレレポート〜

暮らしのこと

カレーやシチューの時など、ふだんの食事で何気なく使っているスプーン。素材や形もいろいろあるけれど、見た目だけでなく、手ざわり、口に入れた時の「心地よさ」で無意識に選んでいる気がします。そんな好みのスプーンも「木」であれば自分でつくれるかもしれない。

2024年夏から「想うベンチ」プロジェクトで開催する『大阪の森の木でスプーンを作ろう!』ワークショップを前に、実は木工初心者というプロジェクト事務局のメンバーが「アルブル木工教室」(大阪市)を訪れ、スプーンづくりを体験しました。

どんな形が心地いい? 触れて、感じて、思うままに。

01. 「木のスプーンはこのサンドペーパー(紙やすり)だけで作ります!」と米地さん

02. ヒノキの木を切り出したスプーンの原型

03. 米地さんの「いっせーのーで!」を合図に「シャカシャカ…」と削る音が響く

04. サンドペーパーに対してスプーンの先は45度に

05. 「昔、自分で作った竹のお箸をすごく大事に使っていたことを思い出した」と話す島本

06. スプーンのくぼみやラインなど削り出すかたちは自由。自分の好みや感覚を頼りに

07~09 仕上げに使うのは(食用の)くるみ。ガーゼの上から叩くとオイルがしみ出し、塗ると木の色が変わり木目がくっきり

10.  「下からオイルを吸い上げるんです。スプーンになってもやっぱり木は生き物」と米地さん

11.  約40分で完成!(といいながら、もう少し削りたい西田)

12. 世界でひとつのオリジナルスプーンはそれぞれの日常へ(気になるところは、またやすりで削り、くるみから出るオイルを塗ればOK)

木がぐんと身近なものに。

つくっていると、この小さな木に愛着がわいてくるんです。ふれているだけであたたかみがあって。やっぱり自分で自分だけのかたちをつくれるということが大きい。作業中にずっと木を見ていたからか、日常でも「木でできたもの」に目が行くようになりました。できあがったスプーンは携帯用としてずっと持ち歩いています(笑) (西田)

自分でつくったら、自分で直せるのもいい。

単純に「没頭する」という時間がめちゃくちゃ楽しかったです。これまで森や木についてお話を聞いたり勉強したりしてきたけれど、実際に木にふれて手を動かさないと分からないこともある。木の香りもよくて、五感が刺激されました。帰ってすぐ子どもに見せたら、かじられて歯形が…(木が柔らかい!)。またやすりで磨かなきゃ。 (島本)

簡単にできた“自分好み”。

実は私、不器用なんです。でも自分の目指すところとか、こういうのが好きっていうかたちを木で簡単に表現できたことは、新たな発見でした。削り始めて、形が変わってきた時くらいから愛おしくなってきたんです。家に帰って他のスプーンと比べたら、朴訥としていて洗練されていなかったけど、一番大切なスプーンになりました。 (中嶋)

「暮らしのなかで『木を使う』という緑化もある」(米地徳行さん)

私は、大阪市内の「平林木材団地」にある材木屋の3代目です。今、材木業界はどんどん悪くなっていて。昔は材木業界の景気が良かったから「木はいいもの」ということを発信してこなかった。だから木の良さを発信すれば、自然に木材業界も良くなるし、日本の木の文化も守られると思って「木育フォーラム」の活動をしています。

世間では一般的に「木が切られること」が環境破壊だと思われていますよね。でも今の日本では「使える木が切られていない」という環境破壊が起きている。だから木をもっと使わないといけないんです。木を使えば、次の木を切ることになって、森は整備されていきます。

大阪府の面積の3分の1は森林ですが、森林面積としては都道府県のなかで1番少ないし、大阪市は森ゼロです。だからといって「森のこと」ができないかと言えばそうではなく、大阪でも「森の木を使う」ことはできるんですよね。そのためにも「木を使う機会」をつくっていくことが大切だと思っています。木工のワークショップでスプーンなど身近なものをつくってもらうのもその1つ。子どもたちに「これ大阪で採れた木やで」「大阪にもこんな木があるんやで」っていうだけで、「おぉ!」ってなります。それって地域を想うことにもつながると思うんです。木を切ることを悪いと考えている子が多いけれど、森のいろんなことを伝えて、身近にふれながら自分で考えてもらうのが一番いいですね。木はいのちに近いものだから、ふれたら感じるものはあると思います。